大判例

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福岡高等裁判所 昭和27年(う)1589号・昭27年(う)1591号・昭27年(う)1590号 判決

原判決が証拠として引用する所論高丸正臣の検察官に対する第一回供述と同人の原審公判における供述とを対比すれば、その供述が実質的に相異つていることが明らかであり、原判決が、公判における供述を採用しないで、検察官の面前における供述を採用したのは、公判における供述よりも検察官の面前における供述を信用すべき特別の情況があるものと判断したのによるものと認められる。そして、右特別の情況の存否については、検察官の面前における当該供述調書の形式、内容、事件における供述者の地位、供述者と被告人との関係、その他各般の事情を参酌考量して裁判所が自由にこれを判定すれば足りるのであつて、所論のように必ずしも検察官において証拠調の請求に際し、特にその特別情況の存在を立証し、又は、裁判所において訴訟手続若しくは判決の上にその特別情況の存在することの明示を必要とするものでもない。

原判示金二百円を被告人に交付した経緯に関する高丸正臣の公判及び検察庁における供述を記録について対比検討するのに、検察庁における供述は、極めて自然的であつて前後渋滞撞着の跡が認められないのに、公判における供述は渋り勝ちで、殊に、「被告人の要求を拒むのが怖かつたのではなかつたのか」との旨の問に対し、何ら返答するところなく、黙つていて肯定も否定もしていない点、恐喝の被害者がその被害顛末を犯人の面前で語るのは、犯人のいない場所で語るのに比べて困難を感ずるのが人情の一般である点、日時の経過と共に記憶も薄らぎ被害感情も緩和されるのが通常の傾向である点、供述者高丸正臣が年令十九年の青年工員であつて、被告人の勢威に動かされ易い性情の者であると認められる点、その他諸般の事情に照らせば、原判決が、高丸正臣の公判における供述よりも検察官の面前における供述を信ずべき特別の情況があるものと判断したのは相当であつて、これを非議すべき事由があるものとは認められない。論旨は採用の限りでない。

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